か・せ・こ・く・い

「分かるなら話が早いや。その子のことどう思う？」
「話したことないから分かんねぇ」
「葵さぁ…豊くんのことが好きなんだって。でも、あの子ブスだし性格悪いから付き合わない方がいいよ？」
ある一人のクラスの女子が豊と話す。
でも、『ブス』や『性格悪い』は言い過ぎ。
そう思った。
すると、豊は立ち上がってその子の胸ぐらを掴んだ。
「ブスって性格もひねくれてんだな！！お前より、生田葵っていう子の方が可愛い。俺、濃い化粧して香水バシャバシャかけてるケバい女大っ嫌いなんだよ！！」
豊の言葉にクラスが静まりかえる。
豊…。
それは本心で言ってるの？
もうやめて。
そんな豊なんか嫌。
普段の優しい豊が見たいよ。
鼻の奥がツンッとして唇をかみしめた。
「待って！！豊くん」
クラスのドアを開けて入ってきたのは葵。
「お前なに言ってんだよ！！コイツらに酷いこと言われてんだぞ！？」
「いいの。私は確かにブスだし性格悪いし…」
豊は葵の目の前に立って、葵を抱きしめた。
「それ以上自分を傷つけるなよ」
「うん…」
葵は嬉しいだろう…。
好きな人に抱きしめてもらえて。
私も豊に抱きしめてほしい。
そう思うと胸が痛んだ。
「おいっ！！このクラスでまたこの子をいじめたら俺が全員殴るから」
ねぇ豊？
なんで葵の味方をするの？
私がいること分かってるでしょ？
って…。
付き合ってもない私が言えたことじゃないね。
ただ、葵に嫉妬してるだけじゃん。
ちょっとだけ期待してた。
もしかしたら…私のこと好きかもって。
でもやっぱり違うんだね。
私の想いって迷惑かな？