か・せ・こ・く・い
家に帰るとごんが迎えてくれた。
「ごん…」
私はごんの前だとなぜか素直になれる。
私はごんを抱きしめ泣いていた。
「ごん…どうすればいいかなぁ?」
ごんに話しかけてもなにもならないのに…。
ごんは『大丈夫』と言ってくれてるようで。
私が流した涙をペロペロ舐めてくれた。

「お母さん?」
私は泣きやみ、涙の跡を消した。
「どうしたの?」
「ごんの散歩行った?」
「あぁ!!まだ行ってない。でも…お母さん見たいテレビ番組が…」
「私が行くよ」
「ありがと♪」
私は部屋に上がり、制服からジャージに着替えた。
「ごん、行く?」
ごんは玄関に走った。
リードを繋ぎ、玄関を出た。

「今日もまたこっちに行くの?」
ごんはまた土手に上がった。
最近ずっと土手に行ってるね…。
豊に逢いたいのかな?
「うわぁ…」
私は土手の下を眺めると、菜の花が涼しい風に揺られて綺麗だった。
川には星と月が映ってる。
「綺麗だよな」
横から聞き覚えのある声。
恐る恐る横を向く…。
「豊!!」
「よぉ!!」
「こんな夜になにしてるの?」
「また体力づくりしてるんだよ」
「へー」
なんでだろ…。
本当は豊に逢いたかったのに、体が拒絶してる。
豊と話したくない。
「ごん?帰ろうか?」
ごんは尻尾を振り、土手にある階段へ向かった。
「おいっちょっと待てよ」
豊が私の腕を掴む。
「なに?」
「もうちょっと話そうぜ?」
「遅いし、帰りたいんだけど…」
豊。
本当はもっと話したいんだけど…。
なぜか冷たい態度を取ってしまう。
気付いてよ…。
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