か・せ・こ・く・い
また始まった。
「別れよう」
嫌。
本当はそう言いたかった。
でも、最後まで我儘じゃダメだよね。
そう思った。
「うん…今までありがとう」
「俺も…今までありがとう」
これでいいんだよ。
これで。
彼は私を抱きしめた。
今までに感じたことのない温もり。
この温もりを離したくない。
私のすべては貴方一色だったね。
「ごめん…ね?」
私の頬に涙が伝う。
「泣くなよ。恋が終わっただけなんだから」
「うん…グスン」
「思い出になるには時間がかかるかもしれないけどさぁ…侑香里ならすぐに素敵な彼氏でも見つかるよ」
「…ヒッ…グスン」
「じゃあ最後に約束して?時々で良いから俺の事思い出して?」
「…うん…ヒッ」
そう言い残して彼は去ってしまった…。
まだ約束の意味が分かっていない。
なんで彼があんなこと言ったのか…。
やっと夢が終わる。
…と思ったら視界が一回真っ暗になりまた始まった。
私はある公園に居た。
歩いている。
すると、彼がまた夢に出てくる。
でも、それは後ろ姿で…。
「○○!!」
私は必死に彼の名前を呼んでいる。
思い出せてないのになんでだろう…。
彼は私の声が聞こえてないのか振り向くことなく歩き出す。
「○○!!」
私は彼の所まで走り、彼を後ろから抱きしめた。
すると、彼は形が崩れ水となり地面に垂れた。
私はその水を掬い上げようとするけど、地面が乾いてたから水がなくなってしまった。
彼を失った。
私は跪いて涙を流した。
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