龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】

4時間目は芸術の選択授業だった。


教室移動なので、みんなでゾロゾロと廊下を歩く。

わたしは書道、美幸と亜由美は音楽選択だ。


「今日、歌のテストなんだよね」

美幸がげんなりとした顔をした。


「歌、得意じゃない」


わたしが言うと、美幸は『とんでもない』って言った。


「カラオケとは違うよ。ピアノ伴奏で独唱、だよ? あー、わたしも書道にすればよかった」


「あんた、壊滅的に字が下手じゃない」

亜由美が笑った。


「じゃあ美術」


「絵も酷いわよ」


「中学の時、校内絵画展で金賞を取ったよ」


それ、すごくない?


「覚えてる。美術の先生の講評もね。『子牛の生命力を感じる力強い絵だ』――だったわね」

亜由美がニヤニヤと笑った。


「そ、う、よ。笑えばいいわ」

< 101 / 191 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop