龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】

『失礼します』と言って保健室に入って来たのは、やっぱり司先生だった。


司先生は、わたしの裸足の片足にサッと目をやった。


「志鶴さん、大丈夫ですか?」


「はい。でも、足を捻挫したみたいで……」


司先生は顔をしかめた。


「片岡先生、捻挫で間違いないですか?」


「医者じゃないんで、多分、としか言えませんよ」

養護の先生は答えた。

「湿布を貼っておくけど、心配なら病院へ連れて行った方がいい」


司先生は、片手で顔を覆って呻いた。


「悟、報告を」


「しづ姫が階段でコケた。落ちかけたところを大輔が術で止めて、僕が下に下ろした。最初に足を滑らせた時に、右足首負傷。僕が保健室まで運んで、片岡先生の見立ては捻挫。以上――圭吾には僕が電話しよっか?」


「いや、いい。それは、わたしの仕事だ」

司先生はわたしの方を向くと、口調を和らげた。

「志鶴さん、迎えが来たら今日はこのまま帰りなさい。鞄は悟に届けさせるから」


「はい」

< 108 / 191 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop