龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】
泣きたい


「そうね、そうするわ」

優月さんが言った。


やだ

涙が溢れそう


「圭吾さん、やっぱり足、痛い」

わたしは足元の床を見ながら、囁くような声で言った。


お願い

わたしを見て


圭吾さんを一番好きなのは、その人じゃない

わたしよ


泣き言を言って気を引くなんて、自分でも卑怯だと思う。


でも

他にどうすればいいの?


不意に頭を抱き寄せられた。

俯いたままの頭のてっぺんが圭吾さんの胸にあたる。


「ほら、だから言ったじゃないか。レントゲンを撮って診てもらおう」


「うん」

わたしは泣きそうな声をごまかすために、俯いたままボソボソと言った。

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