龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】

「しづ姫、その式、間違ってるよ」

悟くんがシャープペンシルでわたしのノートを指した。


「どこ? どれ? この方程式じゃないの?」


「君がたぶん考えている方程式で合ってるけど、bの二乗が抜けている」


オーマイガッ!

初歩的なミスじゃん!


いつもの事だけど、圭吾さんの『すぐに帰って来る』っていうのは、あまりあてにならない。

結局、彩名さんが悟くんのお家に電話をかけて、悟くんはうちに泊まる事になった。

せっかくだから、母屋の居間で宿題を教えてもらってる。

なんてったって、悟くんは特進のAクラスだもん。


「圭吾さん、遅いね」

わたしはノートを書き直しながら言った。


もう夜の十時半だ。

彩名さんはアトリエに戻ったし、伯母様ももう休むからとお部屋に行った。


「何を手こずってるんだか」

悟くんが頬杖をつく。


「あの木、本当にもうダメなのかなぁ」

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