龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】
わたしは、足元でのんびりと寝そべっているペロを見下ろした。


「ペロは何て話すのかなぁ」


「そいつは単純だから聴き耳じゃなくても分かるよ。ごはん、水、散歩、ボール、撫でて」


わたしはクスクスと笑った。


「うん。それくらいなら、わたしにも分かる」


「僕にはそいつが幸せそうに見えるよ。それでいいんじゃない?」


「そうね」


きっと単純な方が幸せなんだわ。

わたしも、ただ黙って圭吾さんに愛されていられれば悩まなくてすむのに……


「ねえ、悟くんは将来どんなお仕事がしたいの?」


「僕?」

悟くんは頬杖を外してニッと笑った。

「ニート」


それ、職業じゃないし。


「あんまり縛られたくないんだよね。なのに親父は、医者だの教師になれって言うのさ。僕が教師だなんて信じられる?」


「向かないかも」

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