龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】
言葉を濁す司先生に、わたしは白い封筒を差し出した。


「圭吾さんからです。わたしが誘っても、司先生は来ないだろうからって、書いてくれました」


仲直りしたといっても、司先生は未だにどこか圭吾さんに遠慮している。


「今、読んでもいいですか?」


「どうぞ」


圭吾さんは何を書いたんだろう?

聞いても、『内緒だよ』って教えてくれなかったけど……?


司先生はペーパーナイフで封を開いた。

中から、淡い緑色の便箋が出てきた。

司先生は手紙の文字を目で追い、柔らかな笑みを浮かべた。


「分かりました。必ず二人で行くと、圭吾に伝えて下さい」


「ありがとうございます!」

わたしは跳ね上がりたい気持ちを押さえて、お礼を言った。

「土曜日、待ってますからね。絶対ですよ」


「ええ。約束しますよ」


圭吾さんが何を書いたにしろ、司先生にとっては大切な事だったらしく、わたしが校長室を出る時もまだ、司先生は広げた手紙を手にしたままだった。

< 172 / 191 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop