龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】
「見ますか?」

美月が期待に満ちた顔で言う。

「見たいですよね?」


「えっ? ああ……」


先生の友達が『この町にいるなら、一度見ておいた方がいい』と言い、美月は待ってましたとばかりに片岡先生を連れ去った。


大丈夫かな……

一抹の不安を覚える。


「滝田、やっぱり来る事にしたんだ」


車を挟んだ向こう側から、悟くんが手を振った。

その声に、悟くんの近くで圭吾さんと話していた巧さんがこっちを見た。


「美幸? 久しぶり」

巧さんは軽く片手を上げた。


「ああ、うん」

美幸は遠慮がちに、小さく手を振った。


巧さんは頷いて、また圭吾さんや司先生との話に戻った。


「ほらね。別にどうって事ないでしょ?」

亜由美が、美幸の肩を抱いて言う。


あ……ひょっとして、いや、ひょっとしなくても、美幸は巧さんと会いたくなくて来たがらなかった?

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