龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】
美幸は黙って頷いた。


すると、亜由美は小声で

「でしょ? あんたにフラれたからって、ずっと根に持ってる訳ないじゃない」

って言った。


「わたし、フッてないし」

美幸もヒソヒソ声で言い返す。


「へぇ、縁談を断ったのって、フッたって言わないんだ」


美幸は不満そうに口を尖らせた。


「直接告られたんでもないし、本人を嫌いだって言った訳でもないっ!」


み……美幸……声……デカイんですけど?


「滝田ぁ、僕が知らないうちに誰に告られたの?」

悟くんが車の向こう側から、間延びした口調でまた声をかけた。


「うるさいわね! 誰だっていいでしょ?!」

美幸が言い返す。


「出し抜いたのは誰? うちのクラス? 知らないだろうけど、君、結構人気高いんだよ」

悟くんは、にこやかに言った。

分かってる――完全にわたし達の話の中身を分かってて、わざと言ってる。


「じゃ、これ運ぶわ」

唐突に巧さんが言った。

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