龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】
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「さて、と。始めるか?」
桜の木の下で、圭吾さんが上を見上げて言った。
地面には白いポリタンクが三つ。
それと小振りの米袋みたいな、重そうなビニール袋が一つ。
「涌き水と木灰と――奉納する物は?」
司先生が尋ねると、要さんが胸ポケットからハンカチを取り出した。
「奉納品はこの木の命。不足はないだろう」
「何が始まるの?」
わたしは小声で悟くんに聞いた。
「さあ? 僕は何も聞いてないけど? 巧兄貴は?」
「聞いてる。でも教えない。楽しみがなくなるだろ?」
「見たところ、何か神事(かみごと)みたいだけど」
巧さんはニンマリと笑った。
「お前は力が強いくせに一族の仕事には無関心だからな。まあ、見とけ。羽竜一族は、黴の生えたしきたりを守り続けて来た訳じゃない」
「えーと、枝の上に女の人がいるんだけど」
美幸が、片手で日差しを遮るようにして言った。
桜の木の下で、圭吾さんが上を見上げて言った。
地面には白いポリタンクが三つ。
それと小振りの米袋みたいな、重そうなビニール袋が一つ。
「涌き水と木灰と――奉納する物は?」
司先生が尋ねると、要さんが胸ポケットからハンカチを取り出した。
「奉納品はこの木の命。不足はないだろう」
「何が始まるの?」
わたしは小声で悟くんに聞いた。
「さあ? 僕は何も聞いてないけど? 巧兄貴は?」
「聞いてる。でも教えない。楽しみがなくなるだろ?」
「見たところ、何か神事(かみごと)みたいだけど」
巧さんはニンマリと笑った。
「お前は力が強いくせに一族の仕事には無関心だからな。まあ、見とけ。羽竜一族は、黴の生えたしきたりを守り続けて来た訳じゃない」
「えーと、枝の上に女の人がいるんだけど」
美幸が、片手で日差しを遮るようにして言った。