龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】
「お見事」

悟くんが言った。

「花咲か兄さんってとこだね」


「口が減らないわね」

亜由美が皮肉るように言った。

「でも、本当に見事な花だわ」


まるで桜色の雲だ。


どこか懐かしい光景のような気がして、

そして―――思い出した。


小学生の時、親父と二人で行った遊園地で、ピンクのフワフワの服を着た女の子とすれ違った。

女の子は泣いて、駄々をこねていた。

『ずるい』と思った。

わたしなら、もっといい子に出来る。

わたしなら、わがまま言ったりしない。

なのにどうして?

あの子にはパパもママもいて、わたしのママはいないの?

不公平だ――


やっと分かった。

わたしがゴールデンウイークに出かけたくなかったのは、家族連れを見るのが嫌だったからだ。


いつの間にか、圭吾さんがわたしの傍らにひざまづいていた。

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