龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】
「泣かせるつもりはなかったんだけど?」

「失礼ね、泣いてなんかいないわよ――座って」


圭吾さんの肩に頭を寄せて桜を見る。


「きれいね」

「ああ。そうだね」

「圭吾さん」

「ん? 何?」

「やっぱりゴールデンウイークは圭吾さんと出かける」


圭吾さんは何も言わずに、わたしの頭を撫でた。


「よーし、花も咲いたことだしパーッと宴会しちゃいましょう!」

美月が立ち上がって言った。

「まずは乾杯ですかね?」


「オッサンみたい」

悟くんがボソッと言い、美幸が爆笑した。



わたし達から一人離れて、要さんが桜の木の下で枝を見上げていた。

その耳には何が聞こえているのだろう?



桜は喜んでいるだろうか。


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