龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】
「分かっています。でも、その口車を利用しない手はないでしょう?」


圭吾さんはペロを抱き上げてわたしに抱かせると、サークルを畳んだ。

おじ様は部屋の一番端に避難している。


ホントに苦手なんだ……


「噛み付きはしませんよ」

圭吾さんがそう言ったけれど、おじ様は首を横に振った。


「怖いわけではないんだ。触れば情が移る」

おじ様は、ちょっと困ったような顔をした。

「子供の頃、猫を飼っていた。わたしの不注意で死なせてしまった……それだけだ」


圭吾さんは少しの沈黙の後、言葉を継いだ。


「叔母さんにそう言えばいいだけでは?」


「自分の弱い面を見せたくはない。分かるだろう?」


「ええ。でも弱い面をさらけ出すと、すごく優しくしてもらえますよ」


おじ様は、圭吾さんとわたしを代わる代わる見比べて、『なるほど』と頷いた。


「お前がやけに柔らかくなったのは、そのせいか」

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