龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】
「それが君の本当の望みなら、いいよ。でも新しい環境で、よく知らない人達の中に入りたくないとか――そういう理由ならダメだ」


うっ……


「ちょっとは、そういう風に思ったけど」

わたしは渋々認めた。

「圭吾さんは、わたしを外に出したくないんだって思ってたのに」


「できれば、この部屋に閉じ込めておきたいくらいだね」


「じゃあ――」


「だけど、それ以上に君に色々な事を知ってほしいんだ。僕は途中でやめる事になってしまったけれど、大学生活は楽しかったよ」


圭吾さんは頭がいいから、そう言えるのよ。

やりたい事もないのに受験勉強するのはつらいんだから。


「この家に来る前は、将来の事をどう考えていた?」


わたしは、少し考えた。


「正直言うと、あんまり深く考えた事ない。適当に行ける大学行って、OLさんになって、結婚してお母さんになる――みたいな?」


「それ聞いてると、お母さんになるのが一番の目的みたいだね」

圭吾さんは苦笑した。

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