龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】
桜湯とか桜餅の、あの匂い。

桜の匂いはバスに乗り込むまで、ずっと続いていた。


桜の生花って、こんなに匂いするんだっけ?

香りの高い品種とかあるのかな……


間もなく通学バスが来た。


バスは空いていた。

午後から入学式だから、今朝は二、三年生しか乗っていないのだ。


「しづ姫」

悟くんが最後部の座席にどっかりと座って、手を振っていた。


「おはよう、悟くん」


近づくと、悟くんは座席を詰めて、わたしの座る場所を空けてくれた。


「ついに最上級生として、偉そうにできる日が来たよ」


いや、今までも十分、上級生を差し置いて幅をきかせてたよ?


「いよいよ大輔くん、入学だね」


「ああ、うん」


あれ?


「楽しみじゃないの?」

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