龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】
3
ペロ、待ってるかなぁ
授業時間自体が短かったので、寄り道はしたけれど、帰宅時間としては早い方だ。
人にしろペットにしろ、誰かが帰りを待っていると思うと、胸がほっこりと温かくなる。
愛される方が幸せ?
そうね、そうかも。
バスを降りると、朝と違って柔らかな風が吹いていた。
バス停から家へと向かう途中に交差点がある。
和服姿の人影が信号待ちをしていた。
だけど――
一向に渡らない。
ひょっとして手押し信号だって気付いてない?
わたしは近付いてスイッチを確かめた。
『押して下さい』の電光のメッセージ――やっぱり手押しだって分からなかったんだ。
ボタンを押すと、文字が『お待ち下さい』に変わった。
その人はわたしを見て、軽く会釈をした。
上品そうなお婆さんで、淡いグレーの着物にくすんだピンク色のショールを身に纏っている。
授業時間自体が短かったので、寄り道はしたけれど、帰宅時間としては早い方だ。
人にしろペットにしろ、誰かが帰りを待っていると思うと、胸がほっこりと温かくなる。
愛される方が幸せ?
そうね、そうかも。
バスを降りると、朝と違って柔らかな風が吹いていた。
バス停から家へと向かう途中に交差点がある。
和服姿の人影が信号待ちをしていた。
だけど――
一向に渡らない。
ひょっとして手押し信号だって気付いてない?
わたしは近付いてスイッチを確かめた。
『押して下さい』の電光のメッセージ――やっぱり手押しだって分からなかったんだ。
ボタンを押すと、文字が『お待ち下さい』に変わった。
その人はわたしを見て、軽く会釈をした。
上品そうなお婆さんで、淡いグレーの着物にくすんだピンク色のショールを身に纏っている。