龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】
問題はこの会釈の意味だ。
わたしがボタンを押した事に対する礼なのか、単に目が合っただけの挨拶なのか、はたまた向こうはこっちを知っているのか……
羽竜本家にいると、一方的に知られているというのもよくある事なのだ。
曖昧な笑みを浮かべて、わたしも会釈を返した。
信号が青に変わり、わたしは一歩踏み出した。
すると、お婆さんが何かにつまずいたようによろめいた。
危ない!
思わず手を差し出した。
お婆さんは、ギュッとわたしの手を握るように掴まった。
指先がピリッと痛む。
さっき切った所かな……
お婆さんがわたしの手を離さないので、わたしは仕方なく、お婆さんの手を取ったまま横断歩道を渡った。
ふわっと桜の匂いがした。
ほのかないい匂い――お婆さんの香水だろうか?
和服だから、匂い袋かもしれない。
道路を渡り切ると、お婆さんはわたしに深々と頭を下げた。
わたしがボタンを押した事に対する礼なのか、単に目が合っただけの挨拶なのか、はたまた向こうはこっちを知っているのか……
羽竜本家にいると、一方的に知られているというのもよくある事なのだ。
曖昧な笑みを浮かべて、わたしも会釈を返した。
信号が青に変わり、わたしは一歩踏み出した。
すると、お婆さんが何かにつまずいたようによろめいた。
危ない!
思わず手を差し出した。
お婆さんは、ギュッとわたしの手を握るように掴まった。
指先がピリッと痛む。
さっき切った所かな……
お婆さんがわたしの手を離さないので、わたしは仕方なく、お婆さんの手を取ったまま横断歩道を渡った。
ふわっと桜の匂いがした。
ほのかないい匂い――お婆さんの香水だろうか?
和服だから、匂い袋かもしれない。
道路を渡り切ると、お婆さんはわたしに深々と頭を下げた。