龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】
今日はわたしの帰るのを、待っててくれなかったんだ……


別に不満ってほどの事じゃなかったんだけど、気持ちが顔に出たのか、和子さんがジロッとわたしを見た。


「圭吾様はお忙しい方ですよ」


うう……分かってるわよ


「ご帰宅の挨拶をされて、コーヒーでも入れて差し上げては?」


「そうする」


「結構。好きな方に喜んでいただくのが、女性の幸せというものでございますよ」


そうなの?

愛する方が幸せって事?

……まっ いいか

圭吾さんに聞いてみよ


「おいで、ペロ」


わたしが立ち上がると、ペロはテッテッと後をついて来た。


渡り廊下を通って、離れの建物まで来ると、わたしは足を止めた。

ニ、三歩先まで行ってから、ペロが不思議そうに振り返る。

母屋と違って、こっちは午後になると人気がない。

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