龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】

圭吾さんが笑ってる。

って言うか、まだ笑ってる。


「何がそんなにおかしいのか、分かんない」

わたしはむっつりと言いながら、圭吾さんの前にコーヒーを置いた。


「だって……だって……進路先を犬に選んでもらうなんて……普通、しないだろ?」


「美幸が、迷ってるならダーツで決めろって言ったんだもの。犬に選ばせるのと大して違わないでしょ?」


それを聞いた途端、圭吾さんはまたゲラゲラと笑い出した。


「ま、まさか、ぼ……僕との結婚、ダーツで決めてないよね?」


「やーね、そんな事してないわよ」


そう言ったものの、わたしも急におかしくなった。

廊下に座り込んで犬に話し掛けているなんて、確かに変な光景だったろう。


「わたしが何をしてると思った?」

クスクスと笑いながら聞いた。


「僕の事を忘れて、ペロと遊んでるんだと思った」


「犬にまでヤキモチ?」


「そこまで酷くはないよ」

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