龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】
もう! しつこい!


「いい加減になさい。志鶴ちゃんが飽き飽きしているじゃない」

見兼ねた伯母様が圭吾さんをたしなめた。


「ああ……ゴメン。つい」

圭吾さんはため息をついて、わたしの足元の床に座った。


「今日は遅かったのね」

彩名さんが小さなコーヒーカップを圭吾さんに手渡して言った。


コーヒーなんて飲んだら眠れなくならない?


「桜で揉めてね」


「桜?」


「松子さんの所の一本桜」


「ああ。子供の頃よくあそこでお花見をしたわね」


「ここ数年花のつきが悪くて、今年は一つも蕾がついていない。専門家に見てもらったら、もうダメらしい」

圭吾さんはコーヒーを一口飲んで、顔をしかめた。

「僕は切るべきだと思う。ほぼ立ち枯れの状態では物理的にも危険だし、良からぬモノが巣くいやすい」


「あなたがそう言えば、それで決まりでしょ?」

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