龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】
5時間目~心の中の絆創膏

桜の匂いがする。

家の門を出ると必ず。


最初はフワッと匂う程度だったけれど、日を重ねる毎に、纏わり付くように匂うようになった。


「ねえ、何かの匂いしない?」

わたしは、学校で友達に言ってみた。


美幸が鼻をクンクンさせた。


「別に。志鶴は感じるの?」


「うん、桜の匂いがするんだよね。すごく」


「桜なんて、もうほとんど葉桜よ。また何かに取り憑かれてるんじゃないでしょうね」

って、亜由美が言った。


また――って何よ。失礼ね!


「志鶴はすぐに同情するからなぁ」

美幸が目を細めてわたしを見た。

羽竜の血を引く美幸は、人に見えないモノが見える。


「ダメ男に惹かれる典型的なタイプね」

亜由美が言った。

「つまずいた相手が圭吾さんでよかったわ」


「言えてる」

美幸が笑った。

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