雨が見ていた~Painful love~



ハァハァと息を上げながら泣きそうな顔で運転席の仁くんを見つめていると


「最初からそう言えばい・い・の。」


彼はにーっこりしたまんま。天使のようにそれはそれは柔らかに、ほほ笑んだ。







――――――………
――――――――………



ずぶ濡れになった私は、仁くんが準備してくれていたバスタオルで軽く体を拭いて、シートが濡れないように気を付けながらゆっくりと座る。




そんな私を見て

「美織、シートは気にしなくていいからドッカリ座りな。」

仁くんは優しく声をかけてくれる。




「え、でも……。」


シミとかついちゃうと悪いし……




そう思ってしまってモジモジしていると


「あのねー。俺の稼ぎ、いくらだと思ってんの。ちょっとくらいシミになってもシートぐらいすぐに変えられるよ。」


そう言って仁くんはケラケラ笑う。





仁くんのそんな笑顔に癒されて


「じゃぁ…お言葉に甘えまして…。」


遠慮なくドッカリと座ると


「うんうん。そーしなさい。」


仁くんは満足そうに、そうつぶやく。




白い革張りのソファーに
高級車独特のふわふわのシート


静車内に流れているのはモーツアルトの優しい調べ。モーツァルトみたいな小さな編成のオーケストラは聞いている人をホッとさせて、優しい音色はギスギスしていた自分の心を少しずつ癒してくれる。



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