雨が見ていた~Painful love~
「いいね、モーツアルト。」
「そう?」
「うん。なんか今日はいろいろあって疲れてたから…なんかホッとする。」
窓の外に流れゆく景色
耳に優しいモーツアルト
カラダは相変わらず冷たいけれど
心の奥はホッとする。
フウと小さく息を吐くと
「響弥は不器用だけど…イイヤツだよ。」
仁くんはサラッとそんな言葉を口にする。
「……。」
今は聞きたくなかったその名前に、拒否反応を示しながら絶句していると
「たぶん美織が泣いてる理由も、こんな風にずぶ濡れになってる理由も響弥が原因なんだろうけどね。
アイツはちょっと口下手で、不器用なだけだよ。」
仁くんは前を向いたまま
静かにこう話し出す。
キョウちゃんが口下手で不器用??
……どこが??
あんなにポンポンポンポン悪口と悪態をつき続けられる人が、口下手で不器用だなんて言われてもなんの説得力もないんですけど!
そう思いながら
「…そうかな。」
そう答えると
「そうだよ。」
仁くんは間髪おかずに、こう返す。