雨が見ていた~Painful love~



少しうつむきがちに
あの時言えなかった“大好き”の言葉をやっとの思いで打ち明けると


「じゃぁ…どうして。」


「…え…??」


「じゃあ…どうして……。
あの時、俺たちは別れなきゃいけなかったんだ?」



拓真くんは私に向き直ると、私の右手をギュっと握って



「教えてくれ。
俺…桐谷さんに嫌われるようなことしたんだろ??」



懇願するように拓真くんはそう呟く。






――あぁ…!!






『返事は……ゆっくりでいいから。』


『え、ええ?!』


『桐谷さんにも都合があるだろうし……、俺、気長にまってるから。』




そう言って
“うちに来ないか?”と誘ってくれた、あの時の彼を思い出す。



幸せで、幸せで

彼が大好きで

彼に奪われるその日を怖いと思いつつも楽しみにしていた、無邪気な私。




――どうして……

こんなことになっちゃったんだろう。




私のすべてを変えたあの出来事

あの強い雨の音を思い出すと、苦しくて苦しくてたまらない。





『やめて…!キョウちゃん、やめて…!!』





「う、うぅ…っ。」





悪夢の記憶
思い出すだけで体の震える、あの悪夢の一夜




それを思い出すと……
私はあふれ出る涙を止めることが出来なくなってしまった。






「…桐谷さん……。」





突然泣き出した私を不審に思っただろうに、拓真くんは優しい目をしたまんま、私の手をキュッと掴みなおす。



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