雨が見ていた~Painful love~


「……。」


「……。」


「……。」





耳に流れる、車のエンジン音に
遠くに聞こえる人の声



私と拓真くんだけがいる、小さな公園




近くに見えるのは
二人の口から洩れる、白い息。




そうやって手をつないだまま
どれくらいの時間が流れただろう。




最後の一言が

決定的な一言が言えなくて

目をつぶって、下唇を噛んだままの私。




そんな私をずっと根気強く待ってくれて、優しく私の手を握ってくれる拓真くん。





「……。」


「……。」


「……。」




言いたい…

だけど言えない。




なんて言えばいいんだろう。




どう伝えればいいんだろう。





怖くて
固まってしまった私の手を優しくなでると



「大丈夫。
俺…桐谷さんからどんな言葉が飛び出してきても、受け止める準備はできてるから。」



そう言って、拓真くんはふんわりとほほ笑む。





「俺、気は長いほうだからいつまででも待ってる。心の準備ができたら言って。」





――拓真くん…。





カレのあったかい一言に心の中が熱くなる。


そしてこの人を好きでよかったと心底思う。


< 178 / 545 >

この作品をシェア

pagetop