雨が見ていた~Painful love~
優しくて
思いやりのある、拓真くん。
――大丈夫。
今は…拓真くんを信じよう。
誰にも言えなかったあの日のコト
誰にも言えなかったあの日のキズ
怖いけれど
認めたくないけれど
勇気を出して伝えよう……。
そう決心した私はフウと息を吸い込んで、心を整える。
「拓真くんが悪いんじゃないの。
原因は私にある……の。」
「…どういうこと??」
怖い…
だけど怖がってばかりいられない。
前に進もう。
前に進むのよ、美織。
フウと息を吐いて目を開けると、
「拓真くんにおうちに誘ってもらった日に…ね?私…レイプされたの。」
ゆっくりと真実を口にする。
その瞬間、拓真くんはグッと目を見開いて私の顔を凝視する。
ーーあ、ヤバイ…。
そして私の手はガタガタと音が立つくらいに震え始める。
「あの日以来、私、男性恐怖症になっちゃったんだ。だから…怖くて。」
「……!!」
「バカだよね。拓真くんとその人は全く違う男の人だ、って頭ではわかってるのにダメなの。体がうまく動いてくれなくて怖くてSGに通えなくて…でも拓真くんに何て言ったらいいのかわからなくて…逃げたの。」
「……」
「……」
「ごめん…ね。
拓真くんの気持ちも何にも考えずに勝手に自然消滅なんてさせちゃって…本当にごめんなさい。」
俯いたまんま。震える指先を必死に握りしめて、なんとかその苦しみに耐える私に、瞬きもせず私を見つめる拓真くん。
ーー幻滅しちゃったよね??
まさか目の前にいる元カノがそんな目にあってたなんて…びっくりするし、正直引くよね…。
「許せない。」
えっ??
拓真くんの発した言葉にドキリとして顔をあげると
「どうして俺に言わなかったの。」
「え…??」
「俺、自分が情けない。」
拓真くんはわたしの手をグイッと強引に引き寄せると、私の体をギュっと強く抱きしめた。