雨が見ていた~Painful love~


「バカだ。桐谷さんは大馬鹿だ。
どうして…どうしてそんな重い荷物を一人で抱えたりしたんだ。」


「拓真…くん…。」


「打ち明けてくれなくてもいい。
どうして俺に寄り掛かろうとしなかったんだ。
俺は……そんなことでアンタを嫌いになるような小さい男じゃない。」



頬に感じる厚い胸板
背中に回された腕はとても逞しくて
カレのダウンジャケットからは、ほのかにタバコの香りがする。





――そう…だよね。

拓真くんにとって見たら意味も分からず放置されて、ずっとココロに引っ掛かりを感じながらの10年だったんだもん。



私のキズは仕方ない。
自業自得といわれても…仕方のない事故だもの。



だけど……
拓真くんは完全に巻き込み事故みたいなもの。




許せるはず……ないよね。
理解されるはずなんて…ないよね。




「ごめん…なさい……。」




どうして、彼に打ち明けようなんて思ったんだろう。



自分が楽になりたかった?
カレのためだなんて言いながら、私は自分のために言ったのかもしれない。



さっきまでの決意はどこへやら。



今の私は完全に負の感情に心が押しつぶされそうになっていた。




自分の行動は勘違いだったのかもしれない、と思うと悲しくて、指先が凍るように冷たくなって、手のひらだけだった震えが体中に広がっていく。



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