雨が見ていた~Painful love~


イライラしながら手帳やら筆記用具やらをバッグの中に押し込んで、出かける準備をしていると


「どしたの?」


喜多川君が不思議そうに声をかけてくる。




「ん?ワガママ王子からのお呼び出し。
今すぐ帝体大のプールに来い、だって。」





ハァとため息を吐きながらバッグを肩にかけると



「…ご苦労、お察しいたします。」




喜多川君はデスクの引き出しからイチゴ味のキャンディーを取り出してホイと私に差し出した。




「なに、これ。」




首をかしげると



「イライラには甘いものっていうだろ?
今から悪魔に会いにいくんだから、ちょっと心の栄養補給していけよ。」



そう言って、喜多川君はニッコリとほほ笑む。






その笑顔に癒された私は


「ありがと。」


甘い甘いキャンディーを口にほおりこんで



「ちょっと出てきます!」



オフィスを後にしたのだった。





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