雨が見ていた~Painful love~
「……諦めろ…ってことか……。」
遠くで誰かの声が聞こえた後
私のおでこには何か柔らかい感触が残り、ドアが小さくバタンと閉まる音がする。
訪れた静寂
遠くで聞こえる学生のはしゃぎ声
それらを子守唄にしながら、私は静かに眠りについた。
そして……
私がゆっくりと目覚めたとき
私が目にしたのは
「……大丈夫か?桐谷さん!!」
「…拓真…くん…??」
心配そうな顔をした拓真くんの姿だった。
――え!?え!?なんで!!?
驚いてあたりを見ると、そこはどうやら医務室。
――そっか…
私、キョウちゃんにプールに突き落とされて…過呼吸を起こしちゃったから、ここに運ばれてきたんだ。
一面白の世界で覆われた、医務室
ふと自分の服に目をやると、見慣れないジャージに身を包んでいる。
少し大きめの黒いジャージ
きっと、水泳部の誰かが貸してくれて、着せてくれたに違いない。
――はぁ……。
自分の身に巻き起こった散々な出来ごとにガッカリきて、大きくため息を吐くと
「いつまでたっても連絡こないから、悪いとは思いつつも会社に連絡したんだ。」
「会社に?」
「…うん。喜多川って人が“桐谷は帝体大に行った”っていうから…心配で来てみたんだ。」
そう言って
拓真くんは私の手をギュウっと握る。