雨が見ていた~Painful love~
「過呼吸で倒れたんだって??」
「あ、あぁ、うん……。」
「ほんと…アンタは心臓に悪い…。」
そう言って
拓真くんはハァと深くため息をつく。
拓真くんの背中越しに見えた時計にふと目をやると、時計の針は8時15分をさしている。
――えぇ!?もうこんな時間なの!?
驚いて目を真ん丸にしていると
「プールに落ちて過呼吸起こしたんだろ?
さっき医務の先生が言ってた。」
「あ、あぁ…うん。」
拓真くんは、事件の核心をついてくる。
拓真くんへの送信途中のメールを見られて、キョウちゃんに突き落とされたプールの中。
恐怖と戸惑いと、身動きできない水の中にパニックを起こして、倒れてしまったあの事件。
拓真くんは……どこまで知ってるんだろう。
キョウちゃんは怖いけれど、彼と拓真くんは顔見知りなんだ。
同じSGスイミングスクールで育った仲間で、当時は親友。
そんなキョウちゃんにそんなメに合わされたと知ったら、嫌な気持ちになるのは当然だ。
だから、なるべくなら真実は知らせたくないんだけど……
そう思って、拓真くんの表情を盗み見ていると
「なんでプールになんて落ちたんだ?」
「…え…??」
「温水とはいえ、水は冷たい。
そんなとこに突然落ちたら驚くに決まってる。」
そう言って
拓真くんはメッと言って、私のおでこをパチンと軽くはじく。