雨が見ていた~Painful love~
傷つく準備はできていた響弥
もっと早くに訪れたはずの非難の声が今になっただけのコト
何も自分は怖くない、と思っていた。
怖いと思った瞬間、あの日の自分を否定してしまうような気がしていたから、絶対に自分はその恐怖に屈してやるものかと思っていた。
だから、キラに黒い過去を嗅ぎ付けられても、証拠を見せつけられても、そこまでの恐怖は感じなかったけれど…
美織にまで被害が及ぶのかと思うと、初めて響弥は“怖い”と思った。
自分の“負けたくない”という気持ちを優先すれば美織を守れない。
でも…全力を尽くさないレースをすることは自分の美学に反する。
――クソ…、クソッ…!!!
自分ならいくら傷ついたって、傷つけられたって、乗り越えてやる!という気迫と自信はあるけれど…、美織を巻き込みたくないと思うのも真実。
アスリートとしての“勝ちたい”という欲望と、ただの男としての“守りたい”という欲望
相反する気持ちが響弥の中で激しく闘う。
そんな響弥の気持ちを底の底まで読みつくしたキラは、響弥のこめかみをもう一度ダンッ!と踏みつけると
「ま、ゆっくり考えてよ、藤堂。」
悪魔な笑顔でこうつぶやく。