雨が見ていた~Painful love~
キョウちゃんにプールに放りこまれ、過呼吸を起こしてしまってから早や3週間。
世間はクリスマスを乗り越えて…すっかり和風な1月の雰囲気を醸し出していた。
気温が下がり、頬に感じる風がひどく冷たく感じる、1月の外気。電車の中では最後の追い込みをかけて英単語を覚えている中・高校生の姿が目立つ。
――はぁ…そんな時期なんだなぁ。
一心不乱な受験生を見ていると、私は昔を思い出す。
その昔
中学三年生にも関わらず、全く受験勉強をしている素振りの見えないキョウちゃんをお説教した時
『うっせぇ!バーカ!
俺にとっての受験勉強は練習だっつーの!!』
中学生のキョウちゃんは、そんなことを言ってたっけな…。
あの頃の彼と同じ世代の男の子を見ると、私はあの頃の、あどけないキョウちゃんの笑顔を思い出す。
今みたいにいつもイライラしていて、私を見かけるたびに、悪態をついて、ひどいことするキョウちゃんも、あの頃の純真無垢な(?)キョウちゃんも、大切なものは何一つ変わってないんだよね…。
『俺はいつか日本選手権で優勝して…オリンピックに出るんだ!』
彼にとって一番大事なものは“夢”
オリンピックという夢のステージに立つという夢なんだ。