雨が見ていた~Painful love~
そして私が守りたかったモノも、もしかしたら同じモノだったのかもしれない。
キョウちゃんの名前を言えなかった、あの日
悲しそうに微笑む拓真くんを見ながら、私は罪悪感にかられていた。
こんなに大切に
真綿でくるむように
優しく見守ってくれていて
「全てを受け止めるから」
とまで言ってくれた拓真くんの優しさに答えられない自分がとても歯がゆかった。
こんなに酷いことされてるのに
こんなに酷いこと言われてるのに
それでも無意識のうちに彼を守ろうとしてしまうのは、どうしてなんだろう。
弟みたいな存在だから?
家族同然の人だから?
アスリートとして尊敬してるから??
それとも――…………
もう少し考えれば、何かの答えに行き着きそうだけれど、臆病な私は“ソレ”に行き着くのが怖くて、ただ逃げた。
――きっと……、腐れ縁だからだな。
キョウちゃんを追い込めないのは、幼なじみだからに違いない。
うん、きっとそうだ。
拓真くんにキョウちゃんの名前を言えなかったことに、深い理由なんて何もない。
臆病な私はこの考えの行き着く先に待つ、たった一つの答えにたどり着くのがとても怖くて、自分で自分を誤魔化した。