雨が見ていた~Painful love~
その言葉を最後に、郷田先生は電話を切った。
プープー、プープー…
受話器の向こうから聞こえる無情な機械音
――キョウちゃんが…予選敗退!?
あのキョウちゃんが??
ありえない!
だって世界記録とタイ記録ってことは…世界で一番速いスイマーって言葉と同義語じゃないか。
世界水泳でも優勝を狙えるほどの実力を持つキョウちゃんが、日本選手権で予選敗退…??
ありえない。
どう考えたってありえない。
――何やってるのよ、キョウちゃん…!!
私は郷田先生の言葉を未だに信じられない気持ちで受け止めていた。
受話器を持ったままフリーズしている私を見て
「お、おい、桐谷!大丈夫か!?」
喜多川君は心配そうに私の肩をポンポンと叩く。
「あ、あぁ、ごめん。」
焦って受話器を元に戻すと
「なんかあった?」
「え?」
「顔が真っ青だぞ。」
喜多川君は心配そうに私の顔をビッと指さす。
「あ…。ちょっと…パニックして…。」
しどろもどろでそう呟いて
ゆっくりとチェアーに腰かけると
「藤堂の…こと??」
喜多川君は突然核心に差し迫る。