雨が見ていた~Painful love~
塩素の香りのする、SGスイミングスクールの長い廊下
プールに近づくにつれてその香りはどんどん強くなり……
「いいぞ!キラ!
無駄な動きは最小限に!!
思いっきり体を伸ばせ!!」
室内プールに入ると、暖房のガンガンかかった室内の熱気と塩素の香りに思わずカラダがウッとなる。
私の真正面に見えるのは、疑惑の王子・吉良光太郎。
だれよりも真剣な目をして泳いでいる、キラの姿があった。
――ふうん…、意外と真面目なんだ。
普段はおちゃらけてる顔しか見たことなかったけど…、水の中にいる吉良光太郎は誰よりも真剣で一生懸命で、その姿はキョウちゃんとダブッて見えて。
吉良光太郎もキョウちゃんも
二人とも性格に(かなり!)難ありでも
アスリートとしては優秀なんだなぁ…
なんて、呑気な私はそんなことを考えていた。
室内プールの扉をくぐって、ゆっくりとプールサイドに歩き出す私。
「いいぞ!吉良!
そのまま死ぬ気で突っ込め!!」
そんなのんきな私をよそに吉良光太郎は150Mのターンを終えて最後のスパートをかけてくる。
煽るコーチに
必死に泳ぐ吉良光太郎
キョウちゃんだけじゃない。
この子も自分の人生を賭けて必死に戦ってるんだ…。
私は今更ながら
そんな単純な答えに気づく。