雨が見ていた~Painful love~

いつもは水と一体になって
まるで水が彼を手助けしているかのように、誰より自然で誰よりも自由に泳ぐキョウちゃんなのに……


今日のキョウちゃんは泳ぎを忘れた、熱帯魚のよう



不格好で
不自然で
見ているこちらさえ、苦しくなる




おもりを着けて泳いでいるかのような、そんな長い長い200Mを泳ぎきり


「ハァッ、ハァッ……、ハァッ!!」


キョウちゃんが水から顔を上げると





「2分17秒26」




郷田先生はフルフルと顔を横に振りながら、無情にもそんな言葉を口にする。




キョウちゃんは悲しがりも悔しがりもせず、肩でハァハァと息をしながら、感情のないロボットのようにその言葉を受け入れていた。




――信じられない……!!





ほんの三週間前までは2分7秒01という、世界記録と同じタイムで泳ぎきれていた、キョウちゃん


優勝間違いなしと言われ
絶好調だった彼が10秒近くもタイムを落としているなんて……!!!



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