雨が見ていた~Painful love~
――あ、行っちゃう!!
そう思った私はパンフスを脱いで、裸足のまんま彼の背中を追いかけた。
ストッキング越しに感じる水の冷たさ
いつもなら濡れるのが嫌でスリッパを借りる所だけど、あのときばかりは何かが違った。
焦ってた……?
戸惑ってた……?
上手く気持ちを言葉に出来ないけれどスリッパを履く、ただそれだけの時間が惜しかった。
プールサイドには不似合いなスーツ姿の女を見て
「桐谷さん!」
郷田先生が驚いたように私に声をかける。
それどころじゃない!
と、思いながら振り返ると郷田先生は背筋を真っ直ぐピンと伸ばして
「藤堂を……頼みます。」
私みたいな小娘に深々とお辞儀をしたのだ。
――え、えぇ~~っ?!
その行動に驚いて
「や、やめてください、郷田先生!」
両手を小さくブンブンしながら、そう返すと
「いや、こんな頭でよければ何度でも下げますよ。僕にはわかる。あいつを立ち直らせるのは貴女しかいません。」
苦しげな声で郷田先生は私に訴えかけてくる。