雨が見ていた~Painful love~
「藤堂にとって、貴女は本当に特別な女性です。アイツは不器用なやつだから、貴女への気持ちを上手く言葉に出来ないんでしょうが……見ていてわかります。」
「……。」
私が特別??
その言葉を聞いて
『響弥は美織のコトが好きだったと思うよ?』
私の兄、仁くんの言った台詞を今更ながらに思い出す。
あれは……雨の中、ずぶ濡れになりながら帰った日だった。
綾音のおうちに遊びに行ったら、キョウちゃんがいて。
ひどい言葉で散々罵ったあげくに男性恐怖症に陥った私に向かって『俺は嬉しい。』とかワケのわかんない暴言を吐かれた日の帰り道だった。
あの時は仁くんの言葉を信じられずに笑い飛ばした。
だってキョウちゃんは私に嫌なことをするばっかりで『好きだ』とも『愛してる』とも言わなかったし、そんなそぶりは全く見せなかったから。
拓真くんに告白されてデートを重ねるうちに、やっぱり思った。
『キョウちゃんは私を好きなんかじゃない』
キョウちゃんは私をお気に入りのオモチャ程度にしか思ってない。