雨が見ていた~Painful love~


思い通りに動かない私にイライラして、怒りをぶつけて、力でねじ伏せようとするキョウちゃんの行動は、恋と呼ぶには酷く幼稚で酷く幼い。



私に向かって頭を下げたまんまの郷田先生に


「私はキョウちゃんの“特別”なんかじゃありません。」


「……。」


「キョウちゃんには、ちゃーんと素敵なカノジョがいます。
私は……ただの“幼なじみ”ですから。」



――そう。
キョウちゃんには綾音がいる。



私はキョウちゃんの幼なじみで
プロモートの所属先の担当スタッフに他ならない。



キョウちゃんの特別な人は綾音
私は……ただの幼なじみ



私は……
郷田先生の言う“特別”なんかじゃないよ。




ペコリとお辞儀をして、身をひるがえし、キョウちゃんの背中を追いかけて走り出すと



「……藤堂も苦労してるなぁ。
でも……、今アイツを助けてやれるのは彼女しかいない。桐谷さんに…助けてもらえよ?藤堂……。」




ゆっくりと頭を上げながら
呆れたように
困ったように



でも、優しい笑みを浮かべながら
郷田先生は私の背中にエールを送り続けてくれていたんだ――……

< 274 / 545 >

この作品をシェア

pagetop