雨が見ていた~Painful love~
思い通りに動かない私にイライラして、怒りをぶつけて、力でねじ伏せようとするキョウちゃんの行動は、恋と呼ぶには酷く幼稚で酷く幼い。
私に向かって頭を下げたまんまの郷田先生に
「私はキョウちゃんの“特別”なんかじゃありません。」
「……。」
「キョウちゃんには、ちゃーんと素敵なカノジョがいます。
私は……ただの“幼なじみ”ですから。」
――そう。
キョウちゃんには綾音がいる。
私はキョウちゃんの幼なじみで
プロモートの所属先の担当スタッフに他ならない。
キョウちゃんの特別な人は綾音
私は……ただの幼なじみ
私は……
郷田先生の言う“特別”なんかじゃないよ。
ペコリとお辞儀をして、身をひるがえし、キョウちゃんの背中を追いかけて走り出すと
「……藤堂も苦労してるなぁ。
でも……、今アイツを助けてやれるのは彼女しかいない。桐谷さんに…助けてもらえよ?藤堂……。」
ゆっくりと頭を上げながら
呆れたように
困ったように
でも、優しい笑みを浮かべながら
郷田先生は私の背中にエールを送り続けてくれていたんだ――……