雨が見ていた~Painful love~
そんな私の言葉をただ静かにすべて聞いていたキョウちゃん。
お互いの呼吸と
遠くに聞こえる水の音
それに…うっすらと聞こえる空調の音
それらに支配される小さなロッカールームの中でどれくらいの時間が過ぎていたんだろう。
キョウちゃんはゆっくりと右手を伸ばして、私の左手をギュッと握ると
「……そういうドンカンなとこも…ホントお前は変わってねぇのな…。」
そう言ってゆっくりと私に顔を向ける。
鼻がつくくらいの至近距離でみたキョウちゃんの顔は、いつもみたいに怒っているでも、イラついているでもない、哀しそうな…顔。
――キョウ…ちゃん…??
初めて見た、幼なじみのそんな表情に魅入っていると
「目…、閉じろ。」
「え、えぇ!!?」
キョウちゃんは突然こんなわけのわからない注文をし始める。
――な、なんで今、目を閉じるのよ!!
繋がれた右手が熱い
見つめられる目が痛い
なんだかいつもの二人の空気感じゃない、どこか切なくて、甘い雰囲気に、私は怯えていた。
ううん…違うね。
戸惑っていた、が正しいかもしれない。
いつもより素直なキョウちゃんと私。
今までに感じたことない、この雰囲気。
完全に私はビビッていた
答えを知りたかったハズなのに
いざ答えが突きつけられようとされると、逃げたくなる
弱虫なのは…キョウちゃんだけじゃないね。
あの時の私は
キョウちゃんよりも、ずっとずっと弱虫だった。