雨が見ていた~Painful love~
ドアノブに手をかけながら
振り返りもせずに、キョウちゃんは私に問いかける。
無様な試合をしたら見損なうか??
うーーーん。
よくわからない問いかけに対して
「見損なうなら、もっと昔に見損なってるよ。」
フフッと笑いながら、私はそう返す。
私は小さなころからキョウちゃんの泳ぎを見てるんだよ??
代官山の実家にあった飾りきれないほどの賞状とトロフィーの数々。
キョウちゃんは強い強いアスリートだ。
負けるなんてありえない。
「キョウちゃんはここぞという試合で負けたためしがないでしょ??」
笑いながらそう答えると
キョウちゃんは私に背を向けたまま、ポリポリと頭を掻いて
「まぁ…。
この俺様の才能と勝負強さ、そして天性の才能を持ってしたら今度のレースもちょろいモンだけよ。
まぁ…万が一の話だよ、万が一の。
もし俺が無様に負けたら、オマエは俺を見損なうか…??」
完全に前半は自惚れた声をして
後半は少し自信なさそうに、悪魔の申し子がつぶやく。
――まったく、子どもなんだから。
見るからにゴキゲンの回復した彼の背中を見て、私は苦笑する。
大体ねぇ?
一回ぐらい試合に負けたくらいで見損なったりしませんよ。
それ以上のコト、こっちはやられてるんですからね!?
そんなことで見損なったりするくらいなら…今こうしてキミの隣にいるはずないでしょうが。