雨が見ていた~Painful love~
まぁ、キョウちゃんの調子が復活したのは喜ばしいことで困ることではないからいいんだけど……なんだか気が引けるなぁ……。
そんなことを思いながらセカセカと仕事にいそしむ、私。
今にらめっこしている資料はキョウちゃんとMETSERAとの契約書。
え??
なんで今さらにらめっこなんてしてるの?って??
METSERAから内定は貰っているものの、あくまでまだ“内定”での話。キョウちゃんの就職はまだまだ確定ではないの。
なんて言ったって吉良光太郎もMETSERAへの就職を希望しているから、絶対安全とは言い難い。
キョウちゃんの時にも
吉良光太郎にも
METSERAの社長と人事部の方はこう言った。
『次の日本選手権で判断させていただきます。』
つまりは、日本選手権でいい成績を残せないような選手はウチにはいりません、っていう意思表示だったように思う。
だからこそ私も喜多川君もキョウちゃんの不調を心配していたのだけど……
――今のキョウちゃんなら大丈夫かな
郷田先生のお電話をいただいて、私はとても安心していた。
「キラと藤堂
いい試合ができるといいな。」
「うん。そうだね。
でも…吉良光太郎には負けないよ??」
「あ、言ったな??
キラはイヤな奴だけど調子はいいぞ??」
喜多川君とそんな軽口をたたきながら
私は何とも言えない安心感を感じていたんだ。
――大丈夫。
キョウちゃんなら大丈夫
そう信じて…
私は何も疑わなかった。