雨が見ていた~Painful love~


――そう…だよね。


相手はあのキョウちゃんなんだもん。
人間悪魔なキョウちゃんなんだもん。



郷田先生も大丈夫だって言ってたじゃないか。



キョウちゃんの勝負は予選じゃなく、準決勝でもなく、キラと闘うことになるであろう決勝だ。





予選は……
キョウちゃんを信じて、見守っていよう。





そう心に決めて
手のひらを強く握りしめたまま、私はグッと前を向く。





目の前のプールでは予選第一組の選手たちが入場をして、選手紹介を始めている。



寒さ対策の上着を脱いで
観客の声援に応えながら、レースの準備を進める選手たち。




緊張の中で選手紹介が終わり
準備を告げるホイッスルが短く鳴る。




その音を合図に選手たちは一斉にスタート台に上り、アスリートの瞳へと変わっていく。





そして……
スタートを告げるホイッスルが鳴り響くと、一斉に水の中へと飛び出した。





――あぁ~~!!
次の次でキョウちゃんが出てくるんだ…!!!



ヤバイ!!
緊張する!!!



きっと舞台裏にいるキョウちゃんよりも、見守ってる私のほうがドキドキしてるんじゃないかと思えるほど、緊張とストレスで泣きそうだ。




全然関係ない予選第一組でこうなんだよ!!?




キョウちゃんが出てきちゃったら…
私、ドキドキしすぎてストレスで死ぬかもしれない!!!




なんだか落ち着かず、上手くレースを見れない私をよそに


「どれくらいのタイムが出てくるかな…。」


拓真くんは冷静にレースの行方を見つめている。


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