雨が見ていた~Painful love~
「…え?どういうことですか??」
拓真くんの言葉の意味を捉えきれなかった喜多川君が拓真くんに尋ねると
「日本選手権の予選は53人全員のタイムを上から順番に並べて、上位16名だけが準決勝へ進むことができるんだ。だから、どれくらいのタイムが基準内なのかが気になるだろ??」
拓真君はわかるような、わからないような必要最低限の言葉で喜多川君に説明をしている。
それでも競泳素人の私と喜多川君がポカンとしているのを見破ると
「53人中16人ってことは確率は約1/4だろ?予選は大体8人1組で泳ぐから、確率からいけば各組の予選1位と2位の選手だけが準決勝に進む。
だから…気になる。」
ハァとため息をつきながら、拓真くんは私たちに説明をしてくれた。
――なるほど…
そう言われればそうだよね。
ココで泳いでいるみんながみんな準決勝に進むわけじゃないんだもん。
簡単に言えばこの予選第一組で1位を取った人よりも速いタイムを出せれば、予選通過はまず安泰。遅いと不安材料が残る…ってことだよね。
そんなプチ講習を受けながら予選第一組の泳ぎを見守っていると、接戦の末に選手がゴールに泳ぎこんできた。
「…2分11秒96か…。
まぁまぁだな。」
表示された記録を見て、拓真くんがつぶやく。
健闘をたたえて拍手の起こる客席で
「え、そうなの??」
私は少し大きな声で拓真くんに尋ねる。