雨が見ていた~Painful love~
いつも近くに感じていたキョウちゃんが遠くに感じる。
会うたびにイジメられて
散々イヤなことされて
もう、関わりたくない!とまで思っていた人なのに。
キョウちゃんはとても優秀なスイマーで、世界の頂点目指して闘って行くべき人。
私みたいな凡人とは違う人生を歩む人。
それは仕事の中で重々承知していたはずなのに…いざその事実を目の前にすると、言いようのない寂しさが心の中を支配する。
――なんで??
なんでこんな気持ちに襲われなきゃいけないの??
私は…拓真くんの気持ちに応えたいと思ってるハズなのに。彼に寄り掛かれたらどんなに楽になれるだろう…って葛藤してるハズなのに。
どうして今更、キョウちゃんに寂しさなんて感じなきゃいけないの??
どうしてキョウちゃんに気持ちをかき乱されなきゃいけないの??
大好きだった幼なじみが
“みんな”のキョウちゃんに変わっていく
私なんかじゃ手の届かない
遠い遠い世界へと彼が旅立っていく
ううん……
違うね。
もともと、キョウちゃんは
大きな世界に旅立ってる人だった。
日本のトップクラスの選手として、世界を股にかけて闘って、そして夢をかなえるために練習をしていたわけで…。
最初からキョウちゃんは
私なんかじゃ手の届かない、大きな大きな人だったんだ。
悪態をつかれて
バカにされて
苛められてて
もうこれ以上関わらないで、とキョウちゃんには望んでいたけれど
それは全部全部、私の恥ずかしい勘違いだったのかもしれない。