雨が見ていた~Painful love~
世界選手権で優勝
オリンピックで金メダル
それがキョウちゃんの最大の目標だったハズ。
水泳協会から締め出しなんて食らっちゃったら、国際大会はおろか国内大会に出場することすら、難しくなってしまうのよ!?
無駄になる……
キョウちゃんの20年近くに渡る努力が無駄になっちゃう!!
わかってたはずなのに。
全部全部わかってたはずなのに
なのに……
なんでそんなコトしちゃったのよ、キョウちゃん…!!!
相変わらず汚い野次と激しい怒りに満ち溢れる、観客席。
キョウちゃんの行動の答えを見つけ出せずに、静かな水面を呆然と見つめていると
♪Trrrr....Trrrrr....♪
バックの中の携帯がけたたましい音を立てて鳴り始める。
驚いて携帯を取り出すと、
そこに現れた名前は“桐谷 慎(パパ)”
その名前を確認して
「はい。」
すぐに電話に出ると
『TVで今の試合は見てた。
美織、今すぐロッカールームに走って響弥を裏口から連れてこい!
後の対応は俺がする。
オマエと響弥は我が家に避難しろ。』
電話の向こうからはパパの怒り声が聞こえてくる。
『喜多川にはそのままソコにとどまるように言っておけ。あくまでもアイツは吉良の担当だからな。』
パパも…いや、社長もこの試合のただならない雰囲気を察したんだろう。声には何とも言えない緊張感が張りつめている。