雨が見ていた~Painful love~
「し、しかし…。」
PASSのない人は絶対にいれるな!と口酸っぱく言われているであろう、警備員さんは少し困惑顔。
「大丈夫。
この責めは私が負います。
カノジョを中に入れてあげてください。」
でも、郷田先生の静かな威圧感に負けたのか、警備員さんはフゥと小さくため息を吐くと
「…お入りください。」
しょうがなく私を中に入れてくれた。
「あ、ありがとうございますっ!」
相変わらず続く混乱の中、お礼を言って中に入ると
「桐谷さん、藤堂は奥の控室にいます。」
郷田先生は私の肩をポンと叩いて、静かにつぶやく。
キョウちゃんに思うところがあるのは先生も同じ。ううん、私なんかよりもっとモヤモヤした気持ちを抱えているに違いないのに
「理解に苦しむ行動ですがアイツにはアイツなりに何か考えがあってのことでしょう。アイツを…藤堂をよろしくお願いします。」
そう言って、先生はニッコリとほほ笑んだ。
――先生……
先生の温かい笑顔に胸の中が痛くなる。
いつもは厳しいけれど、本当は誰よりも優しい郷田先生に沢山の感謝と陳謝の気持ちを込めてペコリとお辞儀をすると
「ありがとうございます。
必ず…必ず藤堂選手を守りきってみせますから安心してくださいね、先生!!」
きっぱりとそう告げて、私はキョウちゃんの元へと走り出した。