雨が見ていた~Painful love~
何も考えられずにバカみたいに突っ立って
何もうつさない
何も感じない瞳でただ前を見つめていると
「何してんだ、美織!!!
さっさと裏に来いって言っただろう!!」
髪を振り乱しながら
必死の形相をしたパパ(社長)が私の腕をグイッと引っ張る。
――え、え、え!?
その声に驚いてハッと我に返ると
「響弥はどこだ。」
「あ、あのロッカールームの奥…。」
「騒ぎを聞きつけてマスコミのやつらがウジャウジャ集まり始めてる。ボケッとするな!さっさとアイツを連れて逃げるぞ。」
パパは見たこともない怖い形相をして、私を力任せに引っ張ってロッカールームへとズカズカと歩いていく。
パパのキレイな顔に青筋が立っている。
ママにはよくこんな顔して怒るけれど、私にはいつだって甘いパパ。鬼社長と恐れられているけど私にはいつだって優しいパパが、真剣に怒っている。
いつにないその形相に
「ご、ごめんなさい…。」
いたたまれなくなって謝ると
「謝るのは響弥をココから連れ出してからだ。」
パパにピシャリと怒られて、私は急にシュンとなる。